2017年02月06日

仏さんに惚れ込んで。。。51 法隆寺 塑造塔本四面具

  「塑造塔本四面具」という名前は馴染みが薄いものと思います。私自身、文化財データベースを使って仏像などの画像データベースを作っていなければ、この名前は知らずにいっていたことと思います。しかし、名前は知らなくても頭の中にしっかりとその姿は記憶に残っているのです。
 法隆寺の五重塔の中に収まっている群像たちです。


 東面は「維摩経(ゆいまきょう)」に登場する「文殊菩薩と維摩居士の問答(維摩方丈)」の場面、北面は「釈迦の入滅(釈迦涅槃)」の場面、西面は「分舎利(インド諸国の王が釈尊の遺骨を分配舎利供養、舎利供養)」の場面、南面は「弥勒の説法(弥勒浄土)」の場面を表わしています。北面の釈迦の入滅を悲しむ仏弟子の像が特に有名です。


 つまり、ここに書かれているのは、五重塔の四面それぞれに、経典に書かれている物語を形にしたものということです。
 記憶に残るのはこれも大学の古美術研究の時に、あの真夏の暑い日に訪れた時のことです。何があるか知らなかった。金網越しに中を覗き込んでとにかくものすごい衝撃を受けたのです。そんなに大きな人間像ではないにですが、とにかくとにかく表情がものすごくリアルでよくここまで彫られたものだと思ったのです。
 釈迦入滅の画面を彫ったところだったかと思いますが、とにかくすごい叫び声を上げているように、私の耳にその叫び声が届きそうにも思ったものです。
 法隆寺は、何度訪れたかはもう回数はわかりません。おそらく20回以上はいっていると思います。行けば必ずこの五重塔の群像を見ます。そして見るたびに新たな記憶が残ります。といって、それを書くことはできませんが、群像の一つ一つの顔が新しく記憶に加わるのです。歳のせいでそれを引っ張り出すことができなくなりつつありますが、それでもこの群像の迫力の記憶だけはおそらくなくならないだろうと思います。
 惚れた仏像はたくさんありますが、この「塑造塔本四面具」はいわゆる仏像とは違った意味での惚れ込みです。

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