2009年08月04日

私は神になりたい。

 裁判員制度が始まった。
 人が人を裁くことは難しいですね。犯罪というものを裁くときは、法律という基準を持って裁かねばならないから余計に難しい。聞くところによると日本の『裁判員制度』は裁判員が量刑まで踏み込むとあるらしい。
 確か、米国の陪審制度では、『有罪/無罪』の判断だけで量刑は裁判官がするんではなかったか?もっとも、裁判に等級があるみたいだからかなり日本の制度とは違うのだろう。

 犯罪、つまり罪を犯した人間に何らかの罰を与える必要があるのだが、その罪自体が人によって感じ方が違うだろう。何故その罪を犯すことになったのか、それを考えると判断する側の心の揺れで結論がかなりぶれることもあるだろう。
 たとえば「嘱託殺人」というケースを考えてみると、結果的には『殺人である』人を殺したと言うことには変わりはない。しかし、病気の苦しみに耐えられなくて『殺してくれ』と哀願されたときに、それを聞き届けた人に対してどのように裁判員は判断するだろうか?本当に哀願されたのか?それとも罪を犯した法の勝手な判断の可能性を払拭できるのか?哀願されていなくても、看病に疲れて、思いあまってと言う、そういった可能性を神でもない人間が、神になったかのごとく、断定しなければならない。
 私ならば、その結論を下した後、一生その結論を下した事への悔いに悩まされるかもしれない。

 昔、10年以上教鞭を執っていた。最初の頃は、レポートの提出による採点に関して、気持ちの抑圧というものもなく、ただ義務としての採点をしていたのだが、 ある時ふと自分の過去の成績表=通信簿の記述がよみがえってきた。そこには教師の所見が書かれていた。
 その通信簿の内容は、上の学校からの問い合わせで公開されていたことを知った。ある一人の教師の所見のまま、上の学校に判断されていたことも知った。その記憶が残っていたのだ。

 一人の教師の下した成績。他の教師が、同じレポートの採点をしたらどう判断しただろうか?私と全く同じになるだろうか?下された判断が、学生たちが就職するときの基準となることもあり得るというのに。
 教師の違い、学校の違い、これによって下された評価が、評価を下された学生の将来を左右すると言うことに思い当たったとき、はたと困ったことがある。
 それに気づいたときかあら、私は学生にレポート返却の際には一人一人に面談で返すことにした。そして、採決の理由とその採決が現時点での私の判断に過ぎないことを話をした。これでも私の独断であることには変わりはない。ただ単なる私のマスターベーションに過ぎないとは思うのだが。
 教師の立場を離れて、正直ほっとした。これで人生を左右する、永久の残る成績という評価を与える事もないだろうと。

 これが、犯罪という問題で、死刑という重罪を扱うとなると、人生ではなく命の問題になってくる。誤審と言う可能性を裁判員は一生背負っていかねばならないのだろう。それが死刑宣告であろうと、その逆であろうと、誤審があったときは、特に冤罪で死刑判決を下したことが分かったときは、裁判員の精神的なものはいかばかりかと思う。

 人が人を裁く。難しい問題だ。 

 私は神になりたい。

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